映画「プリズンサークル」を観てきました。

上映後は、坂上監督と信田さよ子さんのトークショー。
久しぶりの満席の映画館でした。会場、熱かった。。。

スクリーンには収まりきれない貴重な裏話を聞かせていただくことができました。

撮影現場は新しい刑務所で、見た目は綺麗なのだけど、ドアの施錠や食事の運搬、ICチップなどの自動化が進んでいる分、私には無機質な環境に感じました。

ここで、日本で唯一の更生を促す「※TC(Therapeutic Community=回復共同体)」というプログラムを導入しています。
このプログラム内では、何より、スタッフも受刑者も真摯に向かい合っている姿があり、
人と人の温度感が感じられるので、より生きている感じがしました。

舞台は刑務所ですが、グループの中で他の人との関わりを通して、
記憶や感情、感覚など、自分を取り戻していく過程が見えてきます。

幼少期の記憶や家族との関係から見えてくる背景。

自分の罪と向き合うということ。

記憶をつむぎ直すこと。

過去は変えられないけれど、捉え方が変わってくる。

そこから何かよいものを生み出していく。

まさにコンステレーション的な観点からも学ぶことがとても多くありました。

安心して、本音を語れる場は本当に大切。

※プリズン・サークル公式ホームページより

TC(セラピューティック・コミュニティ)

Therapeutic Communityの略。「治療共同体」と訳されることが多いが、日本語の「治療」は、医療的かつ固定した役割(医者―患者、治療者―被治療者)の印象が強いため、映画では「回復共同体」の訳語を当てたり、そのままTCと呼んだりしている。英国の精神病院で始まり、1960年代以降、米国や欧州各地に広まった。TCでは、依存症などの問題を症状と捉え、問題を抱える当事者を治療の主体とする。コミュニティ(共同体)が相互に影響を与え合い、新たな価値観や生き方を身につけること(ハビリテーション)によって、人間的成長を促す場とアプローチ。

Amity(アミティ)

1981年にアリゾナ州ツーソンに創設された世界的に知られるTC。薬物やアルコールなどの物資依存症者を主な対象とするが、実際には様々な依存症や問題を抱える人々を受け入れている。刑務所内外に拠点を持ち、独自のカリキュラムによって様々な気づきや学びを促し、徹底した語り合いや人間関係の新しい構築によって、問題行動に頼らなくても生きていける方法を学ぶ。カリフォルニア州とニューメキシコ州でも様々な活動を展開し、2018年からは出所後の終身刑受刑者の社会復帰施設も運営している。坂上香監督の『ライファーズ 終身刑を超えて』(2004)では、カリフォルニア州の〈刑務所内TC〉と〈社会復帰施設型TC〉が舞台。エビデンス・ベースの複数の研究において、アミティのアプローチの効果(特に犯罪傾向の進んだ受刑者)が立証されている。

TCユニット

本映画の舞台となった「島根あさひ」にある、更生に特化したプログラム。希望する受刑者が、面接やアセスメントなどを経て参加を許可される。アミティのカリキュラムを導入しており、30名〜40名程度の受講生が半年〜2年程度、寝食や作業を共にしながら、週12時間程度のプログラムを受ける。TC出身者の再入所率は他のユニットと比べて半分以下という調査結果もあり、その効果が期待される。

島根あさひ社会復帰促進センター

(以下「島根あさひ」)

2000年代後半に開設された4つの「PFI(Private Finance Initiative)刑務所」*の一つで、犯罪傾向の進んでいない男子受刑者2000名を対象としている。HPはその特色を次のように説明する。

施設環境全体を回復、更生への手段とみなし、生活全体を学びの場とする「回復(治療)共同体」、犯罪行為につながる思考や感情、その背景にある価値観や構えをターゲットとして、効果的に変化を促進する「認知行動療法」、社会の一員であることを意識し、加害行為の責任を引き受ける力を養う「修復的司法」の考え方を教育の3つの柱にすえ、受刑者の犯罪行動の変化や社会的態度の変化を目指します。
http://www.shimaneasahi-rpc.go.jp/torikumi/index.html

*施設の設計、建築及び運営の一部を民間事業者に委託して運営される刑事施設。

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